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悪人正機

by Takapi
まあ、とにかく、下の人たちが自由にやってるよっていうふうに思わせるだけの何かがあったら、それだけで「いい上司」ってことだと思いますね。
これだけです。でも実際には、なかなかいないんですよね。
僕が会社勤めやなんかで体得したことは、会社において、上司のことより重要なのは建物なんだってことです。
明るくて、気持ちのいい建物が、少し歩けばコーヒーを飲めるとか盛り場に出られるような場所にあるっていう……そっちのほうが重要なんだってことなんです。
吉本隆明×糸井重里『悪人正機』/「理想の上司」ってなんだ?(新潮文庫)

2004年に出された、吉本隆明さんと糸井重里さんの対談本『悪人正機』から吉本隆明さんの言葉です。

今でこそ「働く」の文脈の中でオフィス環境がよく取り上げられるし、実際に働く人が気持ちよく働ける環境が整い始めているようにも思うけど2004年時点ではまだ主流ではなかった。
今では「建物」の中にコーヒースタンドがあったり、DJブースがあったりと働く人の「楽しい」を脇に置くようなオフィス環境になってきてさえいる。

冒頭の吉本隆明さんの言葉は「理想の上司」という問いかけに対して。
そこから考えると、なぜ今働く環境が注目され、改善されようとしているか、の根っこの部分の解になっていると思う。

この『悪人正機』は、糸井重里さんがテーマに沿って吉本隆明さんに問いかけるというもの。
「理想の上司」以外にも「正義」「素質」「言葉」「文化」など気になるテーマがたくさんあり、その問いに対する吉本隆明さんの言葉がどれも瑞々しく、それでいてあたたかさをもって届いてくる。
届くというか、馴染んでくるのだ。

滋養のある言葉。
ざっくり言えばそんな言葉たち。
本当は全部紹介したいくらいなのだけれど、それはかなわないのでいくつか引用を。

自分だけがストイックな方向に突き進んでいくぶんにはかまわないんですけど、突き詰めていけばいくほど、他人がそうじゃないことが気にくわねぇってのが拡大していきましてね。
そのうち、こりゃかなわねえってことになるわけですよ。
(中略)遊んだり、お洒落をしたり、恋愛をしたりっていうことがなくなったら、人類の歴史のいいところはほとんどなくなっちゃうんですよ。
吉本隆明×糸井重里『悪人正機』/「正義」ってなんだ?(新潮文庫)

「正義」についての言及。
僕自身何度もやってしまっては後悔していることだ。
落とし所が爽やかなところも良い。そうなんです。「かわいい欲」には忠実であるべきなんです。

モテるとかであんまり得意になったり、モテないということで妙に失望したりしないほうがいいと思うんです。あくまでその時の相手との距離の問題なんですから。
吉本隆明×糸井重里『悪人正機』/「素質」ってなんだ?(新潮文庫)

「素質」についての言及。
これは今恋愛で悩んでいる人にとっては勇気付けられる言葉だと思うし、仕事においても深く感じいる言葉だ。
どうやってもうまくいかない人がいたとしても、それはたまたま今の視座と距離感が違っただけ。
そう思えれば幾分楽になりはしないだろうか。

ちなみに「悪人正機」とは、悪人と自覚できた者のみが救済される、という浄土真宗の教義
このタイトルからして滋養がある。

週末、少し時間のある時に肩の力を抜いて読んでみることをおすすめします。
少し頑張り過ぎて息切れしている人こそ読んでほしい。
きっと今の生活のヒントが転がってるはず。

それではまた、来週から。



Takapi
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