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連れていきたい人の顔が浮かんだら

by Takapi

 吉祥寺駅から徒歩10分位のところに、「ワインと日本酒 大槻」というカウンターがメインの酒場がある。

7月はじめの土曜日に、暇ができふらり寄ってみることにした。

店の外から見るだけでもう既に心地よさそうな雰囲気が醸し出されている。

土曜日ということもあり店内は満席状態。
まわりを見渡しても一人客は僕だけだ。

隣には4人位の団体さんがカウンター横一列に座り談笑を繰り広げている。

お店と常連さんの距離感

団体さんの一人、僕の隣に座るお姉さんは常連さんらしい。
店主との会話でそれは分かる。

その会話を聞きながらも、こういう場にありがちな疎外感はまったく感じなかった。
店主と女将さんの絶妙な距離の取り方と周りへの気遣いがわかるからだ。

そのひとつが常連さんとの会話にある。
会話はあくまで料理と酒についてで、それ以外のことは殆ど話さない。

そして会話の仕方もマンツーマンの会話というより、常連さんの質問に対してそこにいる人全員に回答するようなイメージだ。
だからか、とにかくていねいな受け答えになる。自然常連さんも質問がていねいになる。

それが居心地よくさせてくれる。いつの間にか僕が常連さんの輪の中に入っていくような感覚をおぼえるのだ。

ちょっとした一言の気遣い

「竹鶴、好きなんですか?」
酒のリストに僕の好きな広島の「竹鶴」あることが分かり、3杯目にオーダーした時に女将さんに声をかけられた。

「はい。ああいうドシっとした感じが」
「あぁ。“酒感のある”感じが好きなんですね。うちのお店はそういう酒が多いから合うんじゃなかなぁ。じゃあ次来たときは熱燗にしてみてください。うちは熱燗で合わせるのをすすめているんですよ」
「竹鶴の熱燗、飲んだことなかったです。次お願いできますか」

こういうところにもちょっとした気遣いがある。
相手の飲める量を気にせず「次の一杯にどうですか?」とすすめるのではなく、「次来たら」と返してくれるさり気ない優しさが嬉しい。

おすすめのとおり「竹鶴」の熱燗は美味しかった。
「なんだか熱燗なのに夏っぽいですね。スキッと抜ける感じが」
と感想をこぼせば、すかさず女将さんが
「そうなんですよ!まさにそんな感じなんです」
と本当に嬉しそうな満面の笑みで返してくれたものだから、気になったのか隣の常連さんが声をかけてくる。
「なにその熱燗なのに夏感って。おもしろそう。私も頼みます」
「隣の人の美味しそうなのって、気になるのよね」
そう呟いた茶目っ気のある優しい笑い顔がなんだか女将さんとかぶって見えた。

おすすめを交換し合う

「平日はね、私も一人で来るんです。平日も遅い時間になると一人客でいっぱいになるのよ。」
「へぇ。そうなんですね。ちなみにおすすめはありますか?」
「あぁ。教えてもいいけど、飲んだら通うことになるよ(笑)」
「いや、もう通うと思うんで教えてください(笑)」

そうして教えてもらったお酒が「遠野のどぶろく」。
いや、これが本当に美味しい。
これまた女将さんがすかさず満面の笑みで
「半分は冷で、半分は熱燗で飲むのがオススメです!」

もちろんその通りさせていただいた。
そしてもちろんこれも間違いなく美味しかった。

5杯程度飲み、完全に酔い(ひとり酒は酔うのだ)「では。ごちそうさまです」と腰をあげる。

「また来てくださいね」
「気を付けて帰ってくださいね」
女将さんと常連さんの声がかぶったところで、もう来週あたりに来たいと思った。

帰り道、このお店に一緒に行きたい人の顔が数人浮かんだ。
酒好きなあの人や久しく会っていないあの人や…といった具合に。

「行きつけ」とはおそらく、大切な人に共有したいと思える場所のことなんではないでしょうか。そしてもうひとつ付け加えるならそこに集う人とも同じ時間を過ごしたいと思える場所のことなのではないでしょうか。

平日の疲れた夜に、休日のまだ陽の沈み切らない時間から、気の置けない人とここ吉祥寺「大槻」でやわらかい時間を過ごしたい。

誘われるよりも誘いたい真剣(まじ)で。
※これを言ってみたかった…

それでは、また明日から。

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