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つづけることをつづける

by Takapi

2017年5月3日。
クラムボンが実に8年振りに日比谷音楽堂(野音)でライブを行った。

実はこのライブにはもうひとつ取組がセットになっている。それはこのライブを映像化する資金をクラウドファンディングで集めるというものだ。

結果としてライブ当日には目標金額を超え、2000万近い金額が集まることになった。

更にこの映像の監督はかの有名な岩井俊二さんであり、本来であれば実現できそうもないビッグイベントが可能になった。

ライブ自体もものすごく盛り上がったし(僕も参加して度々泣きそうになってた)僕自身もクラムボンが好きなので(クラウドファンディングにも参加している)本当に良かったなぁと思っている。
早く映像が観てみたいし、それを肴にお酒を飲みたい。

さて、タイトルの言葉は新曲『タイムライン』の歌詞の一部。
ただこの言葉は、一昨年の武道館公演でボーカルの原田郁子さんがMCで話していたことなんです。

はじめての武道館ライブの終盤、アーティストにとって特別である武道館に立てたことを3人それぞれが感想を語るシーン。

ベースのミトさんもドラムの大助さんも共通していたのは「感謝」で、それはメンバーやスタッフのみならず、オーディエンスが支えてくれたことについて感謝しています、ということだった。

最後に郁子さんにバトンが渡り、少し間を置いてから話していたのが以下のフレーズ。

特別歌が上手かったりピアノが上手だった子じゃ全然なかったんです。
だからほんとに今こうやって続けてるってことはなんだろうって思ったりするんだけど。
でも10代の頃に自分に居場所がないっていう時期にすごく音楽からいろんなことを教えてもらったんだよね。
その時の灯ってゆうのがたぶん今でもあって。
それは彼ら二人もきっとそれぞれ音楽に助けてもらったような時期があったんじゃないかって。
それが今日来てくれてる皆さんに中にもあるんだろうなって思ったら、
「つづけるってことをつづけていく」ことでその灯を絶やさず音楽に恩返しみたいなことができたらいいなって思ってます。
ありがとう。
2015.11.6 20th Anniversary tour triology

つづけることをつづけていく。

字面だけ追えば違和感のある言葉だ。

「つづけることをやめない」であったり、単純に「やめない」であればわかりやすいが、そうではなくて「つづけることをつづけていく」。

ただ取り敢えず感覚としてわかるのは、並べた2つの言葉よりも圧倒的に強い意志と覚悟を感じる言葉であるということだ。

「つづけることをつづける」という言葉は本来的には日本語としてはおかしい。
それはおそらく間に入るひとつの言葉を端折っているからで、つまり実際にはおそらくこんな言葉なのではないだろうか。

つづけることを決意しつづける

それはただ漫然と同じ行為を続ける、ということではなくて色んな選択や諦めを繰り返しながらも、クラムボンたらしめるアーティストとして存在し続ける、ということ。

だから重い。
重くて感動的な言葉だと思う。

それでもどうしてこの言葉を選んだんだろう。

そんなことをぼんやり思っていた矢先に村上春樹さんのインタビュー本「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読んでいて「あぁそういうことか」と膝を打ったんです。

手を抜いて書かれたものは、長い時間の中ではほとんどが必ず消えていきます。僕らは時間を味方につけなくちゃいけないし、そのためには時間を尊重し、大事にしなくちゃいけない。
『みみずくは黄昏に飛びたつ』川上未映子 村上春樹/新潮社

引用部分の前後の文脈を踏まえると、作家が最良な(と思われるほどの熱量を込めた)作品を届け続けることで、受け取った読者は、仮にその作品が自分に合わなくても「今回は合いませんでしたが次も期待しています」という信頼関係を作ることができる。そしてそれこそが作家にとって何よりも大切であり、そこには徹底的に時間をかけなければならないということです。

なぜ時間がかかることを尊重しなくてはいけないのか。それについて村上春樹さんはこう応えています。

ものすごくたくさんの人間を一時的に欺くことが出来るし、少ない数の人間を長く欺くこともできる。しかしたくさんの人間を長く欺くことはできない。それが物語の基本原則だと僕は信じています。
『みみずくは黄昏に飛びたつ』川上未映子 村上春樹/新潮社

これはアートや物語だけではなく、ビジネスをしている僕にも非常に刺さる言葉でした。

メディアでコンテンツを届けること、モノを作り消費させることも、物語や音楽と変わらずに手を抜かずに継続して受け手に届けていくこと。

目先の利益やしがらみに振り回されず、消費者を欺かないこと。
そしてそれは時間をかけてやっていくしかないということ。

誰もが一度は教えてもらうビジネスの基本中の基本に立ち戻らせてくれる言葉だと思います。

そんな関係を築き続けることができたから、クラムボンはクラウドファンディングを達成できたのではないでしょうか。

クラウドファンディング自体が伸びているのもわかる。そしてその取組を「応援」する人たちが増えているのも事実でしょう。

でも本当の意味で応援し続けてもらうには性懲りも無くずっとずっと真摯でい続けること、それだけだと思うんです。

ミトさんがクラウドファンディングについて説明した時に持ち出したたとえ話がそれをあらわしているようにも思う。

「場末の居酒屋でさ、隣のおじさんに、おい、お前ちょっと話面白いから聞かせてくれ。一杯おごるから。みたいな感じ」

つまり「物語」を届け続けて、受け取った人との良い関係が積もっていけば、それ自体が新しく出会った人をも信頼で包み、会話を生み、次の「一杯」につながるということなんです。

大切なことを教えてもらったGWでした。

さて、初夏を迎える。

新しい芽が青々と見える頃、新しい決意を表明できるよう動いていきます。

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